マウス、ニワトリ、ウサギについてウイルスが電子顕微鏡で実際に見られるようになるずっと以前に、動物実験によって、憶過性病原体が癌と関係のあることが示唆されていた。 一九0八年、デンマークの科学者W・EとO・Bの二人は、ニワトリの白血病に感染性があることを発見した。
彼らは白血病の細胞から抽出液をつくり、それを最小の細菌さえも捕える浦過器を通過させることによって、この漁過液が健康なニワトリに白血病を伝染させうることを示した。 しかし当時は白血病が癌の一種と見なされていなかったので、この発見は事実上気づかれないままに終わった。
しかしながら一九二年、ニューヨークのロックフェラー研究所にいたP・Rもまた同じようにニワトリを使って固形の腫傷からの抽出液を使って実験をしていた。 彼の腫傷は、ロングアイランドの養鶏家が所有していた縞模様のあるプリマスロック種のニワトリ、米国原産の卵肉兼用運の右胸から得られた。
この不運な養鶏家は自分の大切なニワトリをRのところへもっていったのは治療を期待してのことであったが、Rはすぐさまそれを殺してその腫傷を自分の研究のために使ってしまった。 そして彼はその抽出液を健康なニワトリに注射して、同じタイプの腫傷をつくり出したのである。
長い間、この研究の重要性は、他の科学者たち、とくに癌の研究に従事していた人たちから理解されなかった。 彼らは有毒な化学物質があらゆる癌の原因であることを確信していたし、癌が麻疹や水痘などの病気のような明白な伝染性をもたないために、それがウイルスによって起こることがあるとは単に信じられなかっただけである。
このためRは、同時代人の偏狭な精神に反対して自分を認めてもらおうと苦闘したが、やがて彼自身も有毒物質による実験の方向へと進んでいった。 しかしゆっくり証拠が蓄積してゆき、その業績を認められたRは、発見から五0年以上経った一九六六年にノーベル賞を受賞した。

一九三0年代に、同じくロックフェラー研究所で研究していたR・Sは、ある狩猟家から、大きないぼ状の皮層腫傷をもったウサギが多数アイオワ州にいることを耳にした。 このウサギを数羽手に入れた彼は、渡過した腫傷抽出液をウサギの皮層に塗ることによって、いぼを健康な野生のウサギに移すことに成功した。
しかも彼がこの抽出液を飼育したウサギの皮層に試したとき、いぼのいくつかが皮層癌に成長して拡大したのである。

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